広瀬隆氏の講演


2006.11.2  八戸市総合福祉会館



 前の総理大臣の時代から、日本全体がおかしくなってきている。中東の問題からアメ
リカの飼い犬のようになってきている。私は今東京に住んでいても、孤独感に苛まれて
いる。みなさんもつらい思いで孤独感を感じているかもしれないが、今は私たちが孤独
なのではなくて、日本という国が孤独になってきている。むしろ私たちは世界の中で全
く孤独ではない。

 今年の9月20日にベネズエラのチャベス大統領が国連で演説をして、アメリカのブ
ッシュ大統領をあからさまに悪魔と呼び、(その内容は当日の資料またはインターネッ
トで検索すれば読むことができる)痛切に皮肉った。私たちや世界の良識が常々感じて
いることをチャベスに言ってもらうのはだらしがない。その演説の最後では、国連の機
能がもう死んでいると言った。そして国連改革として、安全保障理事会をどの国も平等
に参加できるように拡大しろ、世界の紛争を効果のある方法で解決しろ、拒否権という
システムを廃止しなさい、と指摘した。この演説は国連総会の場で圧倒的な拍手を受け
た。世界の良識ある人間たちが感じていた言葉をチャベスに言ってもらったのはだらし
ない。

 世界の中で孤立しているのは、アメリカとイスラエルと日本だけだ。イラク攻撃が始
まってから、アジアを含めたユーラシア大陸全体が、良識ある人はほとんど反米という
感情になってきている。日本のメディアはそのように報道していない。小泉が靖国参拝
をしたとき、アジアの反日感情が伝わったときだけその問題がすべてであるような報道
をするが、今全世界はアメリカに対する軽蔑に変わっている。チャベスのベネズエラは
南米最大の産油国であり、チャベスが大統領になってから、ブッシュはCIAを使って
ニセクーデターを起こし、本当に殺すようなことまでやった。こういうことは1950
〜60年代には頻繁に行われていたことだが、ブッシュになってからこの時代にも行わ
れている。チャベスは非常に命が危ない状態で国連に出てきて、演説をしてくれた。

 産油国は石油をアメリカに買ってもらっているので、表面上は握手をしているが、国
民感情は全く違って憎悪の感情に変わっている。ユーラシア大陸の人々の感情は憎悪で
はなく、今はアメリカ人に対する軽蔑に変わってきている。ここでアメリカ人と言うの
は語弊があって、私たちと同じ気持ちで生きている人たちは非常に多いし、アメリカの
知識人は日本の知識人よりもはるかにしっかりした考え方をもっている。それに比べて
日本の知識人は本当にだらしない。しかし外から見れば、アメリカはいやな国になって
いる。

 今の安倍晋三と小泉純一郎が非常に問題なのは、アジアの人に対する世界の状況を全
く理解していないで、世界でもっとも軽蔑されている国の部下になったことだ。そうい
うことを政策の第一に掲げるような人間だ。小泉純一郎が行った唯一の業績は、GHQ
の時代に戻ったという実に下劣なことだった。それ以外にしたものは何もない。

 イラク攻撃が始まる2003年3月20日の前日、自民党の議員さんに呼ばれて、中東の
状況を話してきた。歴史をきちんと話して、アメリカと手を組むことほど愚かなことは
ないと話したら、意外なことにみんな同感だと小泉首相を批判した。歴史を日本人は全
然知らない。アメリカとイギリスの石油メジャーがやった陰謀と戦争と紛争の歴史があ
る。1949年ブライミ紛争、54年スエズ動乱、62年イエメン内戦、91年湾岸戦
争、70年代のヨルダン内戦、63年イラクCIAクーデター、80年代レバノン内
戦、80〜88年イラン・イラク戦争、53年イランCIAクーデター、63〜79年
イラン白色革命と大量殺戮、2001年アフガン戦争、1948〜2002年パレスチ
ナ中東戦争、1982年ベイルートのサブラ・シャティーラ虐殺事件。イスラム教徒の
人がいかにアメリカを嫌いになったかを見れば、歴然としていることだ。

 しかし今日までずっと知らない顔をして、石油を買うからお前らは黙っていろという
形で怒りを押さえつけてきたが、その怒りが2001年の9・11の事件として表れ
て、世界中の良識をもっていた人たちが、もう一度目覚めた。自分たちはのうのうと文
明の生活を送っているが、実際には大変なことをしてイスラムの人たちを苦しめながら
生きているのではないか。ユーラシア大陸の人たちはアメリカよりももっと深い歴史を
もっていて、イギリスは逆にアメリカを諌めた。知識人やBBCは私たちと同じ事をブ
ッシュに対して言っていた。そしてアメリカのメディアも受け止めた。ところが日本の
メディアは海外の新聞が伝えていることをまったく伝えていない。これでは日本人がば
かになるのは当たり前だ。これが今の日本がおかれている悲しい状況。ワシントン支局
にいる人たちが分かっていることが、日本の人たちに全く伝えられていない。今はイン
ターネットで海外の新聞を読めるから、英語を読める人なら外国の世論が分かる。日本
の新聞は新聞と言えない。日本の新聞は歴史もふまえないし、解析力もなく、何の知恵
もなく報道を続けている。

 2003年のEU(キリスト教の世界)の公式の世論調査でも、世界の脅威となる国
を聞いたら、1位がイスラエル、2位がアメリカと北朝鮮となっている。これは私から
見ても世界の良識を反映している数字である。ヨーロッパも全部すばらしいわけではな
い。ネオナチというものがあって、私が93年にベルリンの壁崩壊後に歩いたときは本
当に怖かった。肌の色が白くなければみんな殺してしまうという集団もいるので、そう
した数字も1〜2%入っているが、今出ているイスラエルに対する批判は反ユダヤ主義
のものとは全く違うもので、戦争をやめろという、かつてのナチズムを批判していた人
たちが今、イスラエルを批判している。それと同等にアメリカが批判されているという
状況だ。

 しかしこれだけでは、イスラム教徒や北朝鮮の金正日という人間の心理が分からな
い。これは核兵器や核物質の密輸の世界と裏でつながっている。これに関する報道は嘘
とまではいかないが、一部をクローズアップしているだけで、本当の黒幕は全然出てき
ていない。原水爆の保有量は信頼できる数として、ロシア(8232発)とアメリカ
(7088発)がダントツで、それに中国(402発)・イギリス(185発)・フラ
ンス(348発)が次いで5カ国になる。しかしイスラエルの保有量(推定200発)
はイギリスを抜いている。この事実はアメリカも知っていながら、この数値はないもの
となっている。そしてインド・パキスタンそして北朝鮮。北朝鮮が本当に保有している
のか分からない。アメリカの専門家の話では、北朝鮮の実験は核実験としてはあまりに
も弱々しいので核兵器とは呼べないと言っている。北朝鮮をそこへ追い込んだのは何か
を知っていなければならない。

 イスラエルはイランのブシェールの原子炉を攻撃すると、この3年来国際社会に向っ
て公然と発言している。どのミサイルを使う、核兵器を使うということまで断言してい
る。これはイスラエルの新聞紙上で公然と世界に言っている。これはヨーロッパで読ま
れていて、大変な問題であると捉えていて、ヨーロッパの外交官はイランを一方的に非
難しない。IAEAの中で、アメリカや日本のように一方的に非難していない。イラン
が暴走しないよう、うまくやろうと、ヨーロッパの外交官たちは知恵を絞っている。ブ
シェールがここまできたのはロシアの力があってきたことも分かっている。ヨーロッパ
としてもイスラエルの横暴さにあきれているものだから、イランに多少のことがあって
も、むしろ裏で持ち上げておいて、イスラエルをけん制するくらいの気持ちがあるかも
しれない。実際は分からないが、彼らは政治家ですから、相当に裏を計算しながらやっ
ている。

 そもそもアメリカがイラク攻撃のために作ったカタールの米軍基地が近くにあるのだ
から、ブシェールの原子炉を攻撃しようと思ったらすぐにできる。しかもアメリカとイ
スラエルは一番親密になっている。イラク攻撃と平行してイランに対するとてつもない
軍事的圧力を加えてきたのがこの3年間だった。そういうことが見えないまま、ウラン
濃縮をIAEAが非難しているということで、日本の新聞では一方的にイランだけを取
り上げてきたが、それではイランの人たちがなぜ怒っているのかがわからない。

 このイスラエルの首都エルサレムの写真にはコンクリートの巨大な壁が写っている。
この巨大な壁を廻らしてイスラム教徒の土地を隔離して、洗濯もできないほどに追い込
んでいる。こうやって中東全体に怒りを振りまいている。レバノンなどでも、イスラエ
ルが攻撃をすることを世界がほって置いて、それに対してアメリカが手を貸すというこ
とにみんなが怒っている。しかし日本に住んでいると報道されないのでそれが分からな
い。世界の庶民的な人々の感情が分からない。

 ウサマ・ビン・ラディンという人物がいるが、ニューヨークのビルの爆破事件が起こ
る前に私が彼のものを読んだ時に、全くこの男の言う通りだと思ったことは何かと言う
と、今チャベスが言っていたことと全く同じ事を言っていた。国連は嘘である。国連が
間違っているのだ。これだけ我々が苦しんで、殺されていても国連は何もしてくれない
じゃないか。時々イスラエル非難の決議をしてもそれが何になるんだ。それだったら武
力で一矢を報いたくなるのも当然ではないか。殺されているのだから、と。こうして国
連が何もしないということをチャベスが国連の場で演説して、みんなが圧倒的な拍手を
した。それに対してアメリカの新聞を読むと、決してチャベスを批判していない。さす
がだと思った。イギリスのフィナンシャルタイムスもそうだった。むしろ彼が言おうと
したのは何だったのかを国民に対して問いかけていた。日本の新聞やテレビはもっと冷
静になるべきである。あのひどいアメリカでさえ、このひどい世界情勢が分かってい
る。だから今の中間選挙で共和党が大敗した。そこまできているのに、この日本は何だ
ろう。大事なことを何にも報道しない。こうした内容は一部の人だけしか知らず、当た
り前のことが日本では当たり前になっていなくて、私は本当に孤独感を感じなければな
らない。

 前回のブッシュの大統領選挙が行われたときに、ブッシュの対抗馬を誰にしたらいい
かについて、アメリカの良識の中で何と言われていたかと言うと、別に人間でなくてい
いんだ、ブッシュに対抗するには猿でいいんだ、と言われていた。そうしたら、猿に失
礼だ、イグアナでいい、というのが良識の声だった。しかしその良識は負けてしまい、
ブッシュが再選されて、アメリカの良識派は打ちのめされて、憂鬱な4年間をまたおく
らなければならないのかと思った。今の日本と似ている。また安倍晋三か。またあの顔
をしばらく見なければならないのかと思うとゾッとする。

 アジアの問題に移ると、こうした世界的な感情の包み方と同じ事が日本にある。小泉
純一郎は靖国参拝でアジア全部の人を足蹴にする、向う脛を思いっきり蹴飛ばしておい
て、あの人たちは私に会わない、おかしな人たちだと言う。こういう子どもの思考力さ
え持っていない人間を、日本の国民が支持をしてきた。その日本人をアジア全土が疑わ
ないほうがおかしい。しかたないが、日本人全体を疑うというのが正しい作法だと思
う。個人的につきあえばみんな私たちのことを理解してくれるが、日本人全体について
は、あんたたちは一体何を考えているのだと言いたくなるのも当たり前だ。

 去年の4月に中国全土に反日デモが拡大したが、週刊誌など日本のメディアを読んで
いると、いかにも作られたデモであるかのような書き方がされていたが、それは土壌が
あるから拡大するのである。土壌がなければこんなことはない。2年前の重慶のサッカ
ー場で反日感情が爆発して、中国の全土に飛び火したデモはすごい規模だった。最終的
には中国政府が一応形の上ではストップしたが、感情的には止まっていない。

 もうひとつ北朝鮮の関係では、今韓国の人たちが日本人に対してこんなことを言って
くれている。かなりジャーナリズムに近い人たちだが、日本人が今やっている態度は、
私たちが朝鮮戦争以来間違えてやってきたことをずっとやっている、と言っています。
どういうことかというと、北朝鮮と韓国は朝鮮戦争で戦わされた。南北に分けられて実
際に戦って殺しあったので、同じ民族でありながら悲しいことに憎悪をもった。それで
ずーっとやりあってきた。韓国はどうしてきたかというと、日本では韓国の悪口をほと
んど言わないが、韓国はものすごいことを北朝鮮に対してやってきて、韓国内にはアメ
リカの核兵器が配備されていたので、私が89年に反原発の運動の方に招かれて行った
ときも、板門店という南北朝鮮の境界に行ったときも本当に怖かった。境界に近づくと
列車から誰もいなくなる。通訳の人と二人だけになる。それからその辺の米軍基地を調
べて歩いたとき、タクシーの運転手さんに乗せてもらって行ったとき、「なぜ米軍基地
を調べるんだ。お前は写真機を持っているのか。写真機を持っているのなら、俺は乗せ
ない」それくらい全体に報道管制が敷かれていて、「俺は関係ないからな」というので
す。そういう言質を私から取ってからでなければ車にも乗せてくれませんでした。そう
いう緊張した状態がついこの間まで続いてきた。それが、今韓国の人が言っている、日
本人がやっているのは我々がやった失敗と同じだということで、北朝鮮は叩いても叩い
てもだめだ、そしてわれわれは失敗した、という教訓を得た。結局北朝鮮を追い詰めれ
ば追い詰めるほど彼らは暴走する。だから我々はもうそういう政策は採らない。そして
太陽政策を採ることを金大中が打ち出した。それで成功してきた。

 その結果、もう4年前(2002年)になるが、初めて日本の拉致被害者の方が帰っ
てきた。その当時、日本では猛烈な北朝鮮叩きをやっていた。その拉致被害者の方たち
が帰ってきてからそれほど経っていない時期のフィナンシャルタイムス(2003年6
月)には、「北と南の朝鮮が鉄道で再び結ばれた」と報じられていた。つまり日本が北
朝鮮叩きを一生懸命にやっている頃に、韓国は鉄道線路をもう一度伸ばして、朝鮮戦争
で分断されていた国境が貫通した。そうして交流を続けている。今韓国の取っている政
策、いやらしい言葉で言えば戦略かもしれないが、同じ民族で、家族でさえバラバラに
なっている。その人たちが会いたいと思うのは当たり前のことで、どんな国の人でも同
じことだが、まず今私たちが何をしなければならないのかを考えたときに、まず相手を
知ることだ、そして自分を知ってもらうことだ、という政策に切り換えた。それをやっ
てしまおう、何でもいい、相手が嫌いで自分と性格が合わないかもしれない、だけどま
ず行き来してしまおう。相手がどういう状態で自分がどういう状態にあるかを知らせ合
っていけば、お互いにいつの間にか理解が深まる。それから初めて民族の統一というと
ころに向っていこうということに切り換えた。これが一番知恵のある方法だと思う。

 今日本がしていることは、言うまでもなく違うことをいている。私は横田さんたちを
批判したくはないが、あの人たちがしていることは本当に家族を助けようとしているこ
となのかどうか。本当に家族を助けようと思ったら、韓国がやっている方法でお互いに
知り合って、そしてアメリカの手を借りてはいけない。北朝鮮から一番嫌われている国
ですから。ブッシュなんかのところに行っている。だから韓国の人は言いました。横田
さんがブッシュに会うのはよくない。北朝鮮が横田さんに来なさいと言っているのだか
ら、まず北朝鮮に行けばいいのですよ、と。私もまったくそう思う。どんどんどんどん
距離を離してきた。それをやってきたのは誰か。実を言うと安倍晋三なんです。週刊誌
に「拉致問題を食い物にする」と書かれている通りだ。彼は北朝鮮と密約を取り交わし
て、そうして金正日を裏切った。金正日はとんでもない人間だが、その人間をまた裏切
って、詐欺師も仲介者に入って、とんでもないことをやってきたのが安倍晋三だ。それ
がマスメディアによって虚像がつくられ、総理大臣にいつの間にかなってしまったとい
うおかしな人間だ。

 今北朝鮮にとっては実にいやな存在が安倍晋三であって、北朝鮮の核兵器開発の一番
の動機と噂されているのが、アメリカと日本が嫌がらせを続けて追い詰めてきたので、
北朝鮮はやむなく核実験実施発表という愚かなところまできてしまった。これが世界の
良識のみるところだ。

 こうした中で私たちの最大の問題、六ヶ所村で進行していることはどういう関連があ
るのか。一言では関連付けることができなくて、もっと複雑な構造を持っている。私も
テレビが嫌になってあんまり見ないので資格がないのだが、私が知っている限りにおい
て、この核兵器と原子力の問題を簡単に振り返ってみたい。

 これは98年ですが、それほど昔ではない。インドが地下の核実験をしたことをもう
一度思い出していただきたい。インドが核実験をやった。そしてインドはミサイルの発
射実験をずっとやっている。しかしインドのミサイル発射については日本の報道が全然
非難しない。北朝鮮のミサイル発射については批判している。これも世界の軍事常識で
おかしいと言われていることです。中国もミサイルの実験をやっている。だから北朝鮮
がなんで俺たちだけが国連の中で批判されなければならないんだと怒っているのは正論
だ。だからみんな一緒に批判しなければいけないことを、北朝鮮やイランだけを叩くの
はおかしい。ダブルスタンダードで、基準が2つあって、片一方を批判しないで片一方
だけを批判するのはおかしい。学校で先生がそういうことをやるから、子ども達がいろ
いろ問題を起こすわけで、そういうひいきはやっちゃいけない。私たちが言っているの
はそうではない。それに続いて、同じような経過でパキスタンが核実験をやりました
ね。

 このときに一番批判されたのが、これは日本の新聞では、「オランダで有罪になった
カーン博士は汚れた英雄」という記事が出まして、要するにパキスタンの核兵器開発の
父と呼ばれた人間がどのようにしてウランを密輸したかということについて国際的なジ
ャーナリズムがワーッと書きまして、日本の新聞社もすぐにそういうのに飛びついてテ
レビでも特集をしました。でももともとはそうではなくて、これは私が20年前から言
っていることで、しかも六ヶ所村に一番関係があることだから言いますが、1988年
と89年の核スキャンダルです。両手の中に札束が行き交って、後ろに原爆が炸裂して
いる雑誌の表紙。これはドイツのシュテルンやシュピーゲルが当時詳細に報道したこと
です。一体ヨーロッパの核の世界がどうなっているか、私も分かった。その当時の記事
の中を見ていただくと、パキスタンの核兵器工場の写真がありまして、「パキスタンの
原爆の父カーン博士」というのが20年前に出ていた。このドイツ語の記事の中に構造
図がありました。ドイツ人やヨーロッパ人はさすがですね。私はこれがジャーナリズム
だと思います。それを全部訳してみますと、どういう会社がどの会社を支配して、株を
何%持っていて、そうして最後にパキスタンのカーン博士に行き着くんだということ
を、詳細に雑誌の中の構造図の中に書いてあります。それを全部見てきまして、何だと
思いました。

 六ヶ所村の操業は日本原燃ですが、関西電力がMOX燃料を製造委託した会社ベル
ゴ・ニュークリエールというベルギーの当時核スキャンダルの中心となった会社、それ
からイギリスの核燃料公社BNFL、そして六ヶ所村の再処理工場の技術をほとんど請
け負ってきたフランスのコジェマ、それがベルゴ・ニュークリエールを支配している。
それが東京電力がプルサーマルをやるときのMOX燃料を製造委託している会社です。
その全体的な構造で何が起こったかというのが先ほどの写真にあったように、世界中の
危険な国と批判していたリビアやパキスタンにこの産業が全部横流ししていた。これは
すべてIAEAの組織ですよ。原子力の平和利用を標榜するIAEAの幹部が原爆材料
として、彼らが言う「テロ国家」にプルトニウムとウランを横流ししていた。このスキ
ャンダルが出た。それでドイツでちょうどチェルノブイリ事故の直後だったので、原子
力産業が崩壊していった。

 今の図の中で一番大事な社名を申し上げると、カーン博士が濃縮技術を学んで核兵器
の技術を転用していったときの工場がオランダのアルメロ工場だった。ちょうどその頃
私がこの核燃の問題で六ヶ所村の学習会で回っていたときに手にしたのが、この六ヶ所
村で配られていたパンフレットです。これがフランス・オランダの原子燃料サイクル施
設訪問記と書いてあって、フランス・ラアーグ再処理工場と書いてある原燃の立派なカ
ラーのパンフレット。オランダ・アルメロ、ウラン濃縮工場とあります。ここがパキス
タンのカーン博士の核兵器密造の原点だった。こういうことを私が六ヶ所村の学習会で
話したときに、皆さんはポカーンとして、そんなことがあるのかという顔をしてしか聞
いてくれませんでしたけど、これが事実なのです。ヨーロッパのジャーナリズムにとっ
ては当たり前のことなんです。そういうことを日本では全く報道しません。日本のいろ
んなものを読んでいきましても、この人間たちは本当にジャーナリスト、新聞記者かな
と思います。私は別の(ドイツがなぜ原子力やヴァッカースドルフの再処理工場を断念
したかという)問題でドイツを歩いたときに、ドイツで唯一取材を拒否された工場があ
る。それがこの写真です。これはジーメンスのMOX燃料の製造工場です。今六ヶ所村
でやろうとしている、とんでもないことです。なぜここは取材を拒否したのでしょう。
私はもちろん、原子力反対の人間ですといって全部取材を申し込みました。しかしドイ
ツでは誰も取材を拒否しませんでした。原子力の帝王といわれる人でも私に会ってくれ
まして、非常にフランクで全部話してくれました。お前は原子力に反対なのかというか
ら、もちろん反対だ。だからあなたに取材しているんだ。あなたはドイツの原子力やヴ
ァッカースドルフの帝王と呼ばれる人だから、なぜあなたは断念できたのかを聞きた
い。彼は詳細に話してくれました。それは本にも書いてはいけないことだったので書き
ませんでしたが、フランスのミッテラン大統領とドイツのコール首相の密約のことまで
話してくれました。その内容は本に書けませんでしたが、それくらいフランクに、原子
力はもうだめなんだと悔しそうに言いました。その時代に、ドイツでは原子力の未来を
話すやつはバカだよと彼らが言ったんですから。そんな時代にもジーメンスが取材拒否
をしたのはなぜか。実は、ドイツが核兵器を製造しようとしていたということが明るみ
にでた。原子力の計画は要するに終戦後から始まっていた。ドイツは何とか核兵器を作
ろうと思ってずっと進んできた。その行く果てがこのMOX製造工場だった。だからこ
こは絶対に見せないということで、ジーメンスは上空からの写真だけをくれて、中は一
切だめということで取材を拒否されました。それがドイツ人の間では常識でした。つま
りわが国の原子力政策は、やはり核兵器を製造するためにあったのかということを、ド
イツ人はベルリンの壁崩壊の後で知った。だけど日本人は知っていますか。私たちはそ
う思ってもいないし、まさかそういうことはないだろう。やはり普通に考えたら、そう
思うのが自然だと思います。それは決して、今日の表題にあるように、「核兵器製造の
ためか」これは疑問形だからいいですが、「ためだ」と言えるかどうか、これははっき
りとは分からない、というのが正直なところだと思います。というのはさきほど浅石さ
んがおっしゃったように、プルトニウムの量が43トン、そのうち核分裂性のものが3
0トン近く。これはイギリスやフランスに送られていたものですが、いずれ六ヶ所村で
本格運転が始まるとすれば4トンから5トンは生産される。このことも数字上は分かっ
ている。けれど核兵器にそのままは使えない。いわゆる原子炉級のプルトニウムといわ
れるものですから、プルトニウム239の純度としてはかなり低い。だから私も原爆を
作ったことはないのでわかりませんけども、少なくとも昔からいろいろそのメカニズム
や図面などから、本当にテロリストたちが作れるかどうか、かなり疑って調べてみたこ
とはあります。そうするとどうしても個人ではできないというのが私の今の結論で、技
術・原料、相当高度な原料を手に入れるためには国策でなければいけない。それくらい
高度なものが必要となってきます。ビルを爆発させる程度の、そういう目的のできの悪
い原爆ならできるかもしれません。しかし実際に軍事用として使おうとなるとできな
い。では日本は全く本当に核兵器を製造する能力はないということで切り捨ていいのか
どうか。そういうことを言うと、週刊誌にいろんな評論家が出てきて「できませんよ」
と言うのですが、それは嘘なんです。ウランを原子炉の中に入れまして、使用済み燃料
を取り出して再処理工場に持っていって、そして取り出したプルトニウムを今までの本
来の政策では増殖炉「もんじゅ」に入れて使うことが本筋でした。これが95年の12
月8日の火災事故で一度破綻した。そのままだと六ヶ所村の計画から看板を下ろさなけ
ればならなくて、プルトニウムの回路を絶対に繋いでおこうということで、やむにやま
れず電力会社はプルサーマルという計画を出してきた。プルサーマルの利用法があると
言い続けることによって、再処理工場の看板を必死になって維持している。こうして増
殖炉の実態はないのに、六ヶ所村で3月31日に放射能を放出開始という横暴なところ
にきた。信じられないことにこの「もんじゅ」が生き返ろうとしている。このもんじゅ
が生き返るということは大変なことです。ここで兵器級のプルトニウムがどんどんと生
産できるんです。ここにプルトニウムを入れて、プルトニウムが増えるので増殖炉とい
うのです。高速増殖炉の高速は、スピードが高くて増殖するという意味ではなくて、高
速中性子を使うという意味ですが、外側に取り囲んだ劣化ウランがどんどんプルトニウ
ムに変わっていく。これがいわゆる兵器級、つまり原爆級のプルトニウムがどんどんで
きてくることになる。これが今、生き返った。本来は1回裁判でこちら側が勝って、福
井の人や敦賀の人、多くの人が喜んだのですが、結局日本は最高裁でこれをひっくり返
しまして、ついに運転をするという、今秒読みのところまできている。なぜそんなこと
をしなければならないのか。これは基本的には増殖炉をやってきた人は全員知ってい
る。科学的なことですが、日本では絶対に増殖しない。増殖するといっても、数十年経
って1.0いくつしか増殖しないものは増殖炉とはいわない。倍々くらいにならないと
何の資源の増産にもならない。そういうものになぜ固執するかといえば、これはどう考
えても核兵器の生産しかない。これだけは言えることです。もんじゅでプルトニウムが
多少増えたとしても何の意味もない。これを日本全国に30基くらい巨大な増殖炉をや
って、それが全部うまくいって初めて、プルトニウムが理論的に増殖することになる。
これは95年のもんじゅの事故が起こる前から分かっていたことです。だからなんでや
るんだということをみんなで言ってきた。ということは、結論として技術的にこれから
どうなるか。核兵器は運搬手段・搭載手段・発射手段がないと意味がない。たとえば原
爆を家の中に持っていても、敵国を破壊するのに役に立たない。運ぶ手段が必要にな
り、これはミサイル開発に通じてくる。また日本にはロケット手段がないということを
言う軍事評論家がいるが、そんなことはない。日本ではなぜそんなおかしなことを言わ
なければならないのか、明治維新まで戻りたくはないが、安部晋三という人の発言を聞
いていると、どうもおかしい。彼は、古い言い方ですが、山口県の長州の出です。東北
の人は嫌いでしょう。戊辰戦争。私も大嫌い。それはいいのですが、日本の歴史認識と
いうのが本当に甘いのです。去年の8月から今年の8月まで、小泉総理の問題をとうと
うと批判したのはどこかというと、驚くべきことに読売新聞なんです。言外に批判した
のはあのナベツネなんです。一番嫌なやつが一番いいことをやってくれた。1年間戦争
責任シリーズを月1回から2回ズーッとやって、私はこれをインターネットで全部読み
ました。今は小冊子で出ていますので、皆さんもごらんになってください。いわゆる叙
情で追及したのではなく、当時の戦争犯罪者の実名を全部挙げてあります。ただし私は
違いますよということを胸の中で囁いた。なぜかというとそれは本当の日本人の間違い
は、ある時期から、つまり張作霖爆殺事件とか満州事変とか、その辺からクローズアッ
プして、昭和に入ってからの責任論になっている。確かに、その記事は間違いではな
い。見事な記事なんですが、私が言いたいことは違います。もっと悪いのは、司馬遼太
郎たちが振りまいてきた、日清戦争や日露戦争までの日本は正しかった、すばらしい国
だった、という意見、これが間違いなんですよ。それを言いたい。吉田松陰はみんな好
きなんですよ。これが困るんです。吉田松陰が井伊直弼に殺されたことでは、井伊直弼
と幕府が悪いことに間違いない。吉田松陰が振り撒いたのは、どういう思想か、天皇を
祀り上げる、そこまではいいとしても、朝鮮はもと日本の国だったという妄想を、維新
の志士たちに振りまいた男なんですよ。それで何が起こったのかということを私は聞き
たい。それで起こったのは、みなさんのお手元にある年表なんですが、要するにアヘン
戦争があって、ペリーが来航して明治維新がありました。この辺で維新の志士の話ばか
り出てきますけども、こんなのは武士の争いだけであって、日本の本当の自由の戦いで
もなんでもない。明治維新というのはただのクーデターに過ぎないんです。何にも自由
化はしていない。あの中を変えて文明開化を進めたのは、ほとんど幕府の生き残りの幕
臣たちです。維新や明治政府というのは本当にクズばっかりです。だけどおかしいこと
に本を読むと偉人になって出てくる。そして日清戦争というのは日本と清国(中国)が
戦争をしたんでしょう。違うんですよ。日本が戦争をしたのは、朝鮮半島を取るために
戦争をしたんです。日清戦争の前に、明治維新の直後の1875年(明治8年)に、日
本人は江華島事件といって、朝鮮の首都・京城(けいじょう)、つまりソウルの目の前
の江華島に「押し入って」、その前にも台湾に侵略しているんですが、それで江華島条
約というものを開いて、日本人がペリーになったように威張って、滅茶苦茶な通商条約
を結ばせた。続いて、日本軍が上陸して朝鮮の王宮まで占領して、そして最後に日清戦
争をやった。つまり朝鮮を取るために、中国を追い出すためにやったのが日清戦争だ。
中国と戦ったのは実際の目的ではない。その日清戦争の中で尖閣諸島を日本の領土に組
み込んだのです。最近も中国との間で問題が起こっているのはここなんです。ここは私
からみると、ここはどこの国の領土でもないと思います。竹島でもそうです。本来はお
互いに仲良く共有すればいい場所だと思いますが、このとき日本が勝手に日本の領土に
編入した。だから中国人はこの問題を蒸し返す。なぜ蒸し返すかというと、小泉首相が
靖国に行くからなんです。中国の人は大人(たいじん)といわれる心を持っていますか
ら、行かなければ蒸し返しません。嫌なやつが嫌なことを中国にすれば、嫌なことを蒸
し返してやろうと思うのが政治です。だからこの尖閣諸島問題で、日本は非常に不利な
状況に追い込まれている。あのアホ総理のために、日本人は自ら大変に困ったことにな
っている。怒らせるからだ。それで当時何をしたかというと、台湾を植民地化しまし
た。日本が勝手に台湾を取ってしまった。このとき何万人も殺している。今日は私は新
幹線に乗って八戸にやってきました。途中で水沢を通りましたが、水沢の後藤新平は岩
手県の生んだ偉人で、確かに日本では優れたことをやっているんです。だけど彼は台湾
では、虐殺をずっとやっているんです。日本がつくった台湾総督府の初代の民政長官と
して虐殺をして、とんでもない法律を作ってやったのが後藤新平。要するに明治維新の
後にやってきたことが、そもそもの間違い。次にやった日露戦争は日本対ロシアです
か。これも同じ。悪いロシアが降りてきた、この当時のロシアは悪い。しかし悪い日本
も存在した。悪い者と悪い者が両方で戦ったのが日露戦争です。だから日露戦争ではど
っちが偉かったという話ではなく、どっちもアホだった。どっちもアホだったのに、日
本が勝ったからと喜んで、「その時歴史が動いた」なんかでNHKが放送するとみんな
で手をたたいている。それではだめですよ。日本人には歴史の知性が全くない。この日
露戦争で何をしたんですか。もともと満州というのはすばらしい土地で、実をいうと本
当に人がたくさんいたんです。ところが日本人が入っていった頃は、いわゆる荒れ野の
満州と言われていた。荒れ野にしたのは実は日露戦争で荒れ野にしたのです。みんな中
国の民家を壊して、塹壕を造るために荒れ野にした。そういうことをやって、そういう
中で竹島の領土編入を決定した。朝鮮半島があって、竹島があって、島根県があってで
すが、その島根県がまた竹島の領土宣言なんかをやるものだから、韓国はまた今怒って
船を出している。竹島なんかはゴツゴツの岩ばかりで誰も住んでいないところです。あ
んなところを取り合ってどうするんですか。だけど韓国の人はなぜそんなに執拗に怒る
かといえば、理由は私にも分かる。今の日本の総理大臣が気に食わないからです。いや
がらせをやりたくなりますよ。本来は両国の首脳が本当の意味の友情をもって付き合っ
ていたら、そんなことは起こらない。もともとはここは石油利権とか漁業権とかの問題
で竹島を取り合っているのですが、そういう利権にしてもお互い仲良くできるはずで
す。それをやるのが知恵のある外交ではないですか。だけど今は知恵ある外交がない。

私が言いたいのは、結局維新の三傑と呼ばれるこういう人たちもおかしなことばっかり
をやっているんですね。国内の争いはいいですよ。明治維新が文明開化をしたというま
やかしの歴史を説明するぐらいで、チャンバラみたいな講談を語るのは勝手にやればい
い。しかし日本人が国際的に何をしたかということをきちんと理解しないで、こういう
明治維新をただ礼賛していくことが本当にいいのかどうか、十分に私たちはもっと考え
るべきだと思う。そして明治維新から大正・昭和とだんだんと暴走してくるわけです。
その行き着く果てが1945年の敗戦という日であったのです。その経過を今ほとんど
語らなくなっている。こういう歴史が講談や美談の中でしか言われないのですが、そも
そも征韓論みたいなことは、こういう長州や薩摩の人間たちがみんな振りまいて、おか
しいです。歴史を調べてもわからない、自由民権運動をやった人たちがみんな征韓論な
んです。征韓論は文字通り韓国を征服せよという武力政策です。民権運動の指導者、板
垣退助やああいった人たちがみんな征韓論者です。どうも理解できない。それを辿って
いくと、吉田松陰にたどり着く。結局そこで振りまかれた武士の思想が、結局おかしな
ことになってきたということが分かってきた。そしてこれをずっと歴史を綿密に、日付
をずっと入れていくと全部解けてくる。ここに(資料9ページ)私は線を入れています
が、こういう顔はみなさんだいたいいろんな本でご覧になっている通りですが、線を入
れてあるのは一族・近親者の線です。大久保利通だけちょっと離れてますけど、もうち
ょっとで繋がります。要するに誰がそれをしたかというと、一番悪いのは初代の総理大
臣・伊藤博文で、日清戦争の開戦から韓国に侵略していって初代の韓国総監(朝鮮支配
者)になって植民地化を始めた男です。そして長州藩の桂太郎、長州藩の井上馨、長州
藩乃木希典はみんな近親者です。そして親戚で吉田松陰がいるんです。みんな親戚で
す。最も悪いと言ってもいいのが長州の寺内正毅。これは本当に日韓併合というのをや
った悪の大親分、初代の朝鮮総督。これも後藤新平の親分だった台湾総督・児玉源太郎
の近親者です。そしてこの閨閥から長州の松岡洋右が出てくる。このときはもう長州で
はなく山口県になっていますが、日独伊三国同盟で満鉄総裁になって、日本を最後の末
路に導いた男がいて、その近親者の岸信介がいまして、満州国の商工次官として悪の限
りを尽くして、この弟の佐藤栄作が日本の動燃の再処理工場の建設にゴーサインを出し
た。最後のところに、この長州の三人の履歴を書いてあります。もう時間がないので詳
しく説明できませんが、非常に問題なのは、山口県の人間が悪いのではなく、この集団
が悪いのです。だって今山口県の上関原発で反対運動している人たちは我々の仲間です
から。あの祝島で、日の丸を掲げた私の本当に大好きな人たち。だから山口県じゃなく
て、歴史を調べてみると山口県の中の極悪集団ですね。私はどうしてもこういう言葉を
あのチャベスのように使いたくなる。明治政府というのは実に全くひどいですね。全然
文明なんか開化なんかしていません。文明開化したのはみんな幕末の優れた幕臣です。
明治政府をどんどん変えていったのも幕臣です。途中からその幕臣も結婚で全部一緒に
なってしまうから明治時代が悪くなっていくのです。それから大正・昭和となり、経済
問題と絡めて、どんどん戦争経済国になった。これが軍国主義です。軍国主義というの
はただ鉄砲を持つという単純なことではなくて、ある種の軍国経済で成り立つところに
怖さがあります。だから山口県出身の7人をなぜ私が言うかというと、安倍晋三がこの
日本を破壊した7人の長州藩出身の総理大臣を尊敬しているからです。そんな頭脳レベ
ルの人間が総理大臣であるというのは大変困るわけです。しかも思想的に同じだという
のです。小泉純一郎もそうだったのです。彼は吉田松陰が大好きなんです。吉田松陰の
萩の遺跡なんかに行っては持ち上げてくる。萩の人は喜びます。そういうことをやって
きている。しかしその歴史が何をしたかに対して、本当に物事を考える人間の思考が全
然ない人間なのです。しかしもっと困るのは、山口県出身の安倍晋三が尊敬する7人の
首相の通算在籍年数が合計34年。内閣制度120年間の1/4以上を占める。どうし
ますか。こういう国なんですね。だから、ここでは枚数が増えるから資料から省略しま
したが、伊藤博文から始まりまして、日本の軍国制度を作った山縣有朋、それから桂太
郎が完全に侵略をやった。そもそも山縣有朋は自分で宣言しています。「我(わが)利
益線の焦点は実に朝鮮に在り」と述べ、「強力を用いて我が意思を達する」と明言した
上で、アジア侵略に踏み出したのです。今言ったような歴史のほとんどの主役は、安倍
晋三の尊敬する7人の総理大臣がやっている。だから私は来年に問題があると思ってい
る。今日の主題そのままではないのですが、安倍晋三のブレーンである中西輝政たち
が、本当に核兵器を持つべきだということを、べらべらと言ったり本を出したりしてい
るのに、日本のメディアは批判もしません。美しい国なんて冗談じゃない。日本をさん
ざん汚く汚して破壊しているこの男が、国を作るなんて冗談じゃない。もともと日本は
すみずみまでいい国なんです。いい国の経済を全然理解できないで、アメリカの奴隷的
な経済に今持ち込んできている。これは今の日本の露骨な失敗、本当は竹中平蔵のよう
な人間が一番いけない。ああいう男は、アメリカに洗脳されて、マクロ経済なんてい
う。経済学者のエセ経済で成り立ってきたものでろくな物はないといわれてきた。だか
ら私たち誰もが感じている、貧困層の急拡大、自殺者の激増、年金の崩壊、失業と倒
産、こんなことは全部分かっているのです。こんなことは経済学的に全部私たちは、ど
ういう風になって、日本の金がどこに流れて行っているか、アメリカ政府に流れていっ
ているかが分かっているわけです。日本の輸出入額を調べても分かるとおり、もう今日
本は、輸入でも輸出でもみんな、50%をアジア・太平洋諸国でもっている。アメリカ
なんかはいいんですよ。向こうがやりたいと言ったらつきあってあげればいいのであっ
て、誰のためにしろというのではないが、日本は別にアメリカがだめになったからとい
って、その付き合いを第一にしたからといって、もうそういうことで成り立っている国
ではない。そういうことが全然分かっていない。北米はカナダまで入れて、これだけ
(輸出で26.1%、輸入で17.5%)で、アジア・太平洋の方がよっぽど大事でし
ょう。アジア・太平洋とヨーロッパ。ヨーロッパの人たちはさっき言ったようにもう、
感情的にはアメリカが嫌いになっています。こういうしかも良識に裏打ちされている。
その力を私たちが本当に信頼してやっていけば、日本は孤立しないのですが、今や精神
的にもいろんな意味で孤立していると思います。理解できないのが、若者の失業率がど
んどん上がっていること、正社員がどんどん減ってパートでみんなごまかすという中
で、経済は回復していると嘘ばっかり言っている。世界の問題にもう一度もどります
と、これがいわゆるグローバリズムの失敗なのです。これは日本の国内で起こっている
だけではなくて、同じことが東南アジアの失業率でも起こっています。要するに、19
93年にGATTの自由貿易協定の合意、いわゆるグローバリズムに火がついて、そこ
からこんなに(400〜500%)失業率が上がってきています。グローバリズムとい
うのはアメリカを批判してチャベスが言ったとおりなのです。本当に勝手に自分たちが
好きなものを取っていくだけで、肝心なところはみんな損をしているじゃないですか。
みんな失業しているじゃないですか。何にも潤っていない。潤っているのはニュースの
上で大都市であるとか大企業をクローズアップしているだけだ。統計を取ればこういう
ことは国際統計やILOやなんかでみんな出ている通りだ。グローバリズムというのは
完全に失敗した。失敗したから、チャベスが国連でテーブルを叩いて、「何をやってる
んだ、国連は失敗したんだ」と演説した時にみんなが拍手をした。そりゃそうですよ。
だからこういうやり方でやってはいけないんだと、思っているんだけど、それが私たち
の思っているようにはこない。それは一体何なのか。結論を言いますと、日本の場合は
都会中心のマスメディアが、ジャーナリズムはないといっていいくらい堕落していると
思うし、メディアというのはマス(大衆)への伝搬手段でしかなくて、クズのニュース
をいっぱい流す。楽しい番組はたくさんあって、それを私は批判しているわけではな
い。だけど肝心のニュースを流さないで楽しいことばかりを言うのであれば、それは子
どもの遊びじゃないですか。はやり押さえるべきことはきちんと押さえて、国民を啓発
をして、自分たちが主導していく。それくらいの人たちが国をリードしてくれなけれ
ば、この国はいけないと思います。最後に、皆さんには暗い気持ちをもたないでほしい
と思います。私たちがやってきたことは、1984年4月20日からの反対運動でし
た。ニュースが出てから皆さんも地を這うようになさってきたこと。これは本当に正し
いことなんです。ただ今の日本の中では思うようにならずにここまで来ていますが、こ
ういうことが続くはずはないと私は思っています。これが続かない原因が、大事故でな
いようにしなければいけない。これは絶対に私たちの世代がやらなければいけないこと
で、私が皆さんに説教しているのではなくて、私が自ら思うことで、いま本当に悔しく
思っています。青森の再処理工場は絶対に動かないと確信を持って運動してきました
が、今ここにきてしまって、本当に恐ろしく思います。

 あと一つだけ核燃に関して言っておきたいのは、やっぱり私が心配なのは大地震で
す。放射能の放出の問題は皆さんが重々ご承知のことですから申し上げませんが、私が
地震の分布を観察していると、異常な動き方をしていると感じています。これは阪神大
震災のときにもあったのですが、みんなその後で忘れたんですね。この3年ぐらいかな
りいろんな地震が起こっていまして、一番心配される巨大地震としては静岡県浜岡原発
周辺、この問題はみなさんもご存知でしょうけれど、一番大事なことはプレートが全部
繋がって動いている現象です。こんなことは浅石さんたちを前にして失礼ですが、原点
に戻って考えた方がいいと思うのは、地球の構造です。地殻表面の幅にはいろいろな説
があって場所によって違いはありますが、この卵の殻ほどもない薄い表面に私たちが生
きていて、おととしスマトラ沖の地震津波が起こりました。これはあまりにも規模が大
きいので、普通に想像もできない、世界中の地震学者も誰一人予測できないことが起こ
ったわけです。起こったのは、オーストラリアプレートの北端で、隣接して太平洋プレ
ートがあり、その隣にフィリピン海プレートがあって、その北端に浜岡原発がありま
す。このスマトラ島から北に伸びる断層が動いた。私がこれを見てドキッとしたのは、
六ヶ所村の前を走っている海底断層なんです。これが動くのではないかとどうしても想
像して怖くなるのです。なぜかと言うと、プレートは言うまでもなく全部くっついて、
板と板が連動して、ここで起こったことは絶対にこっちに来ている。エネルギーがく
る。地球というのは片一方が動くと、もう片一方も動くようになってている。一箇所だ
けが動くということはできないのです。ここで大変なエネルギーが出て動いた。どっち
に動いてどういうふうに動いたのかは、正確には分からないし、人類には分かりません
が、日本にも影響が来ていることは間違いがない。こういうことを言うと妄想ではない
かと言われるのですが、一昨年台風がものすごく多かった。東北ではどうだったかはあ
まり記憶がありませんが、南海の海水温が高かったのです。私は、台風が非常に多くな
ったとき、私は地球温暖化説を信じていないので、夏に海底が動いているのではないか
と思ったのです。もちろん測定することはできないので分かりませんが、海底から熱が
出てきて、それが台風の異常な発生につながったのではないかと考えると、プレート境
界で何かが起こっているのではないか、大地震が起こるのではないかと思っているとこ
ろへスマトラ沖の地震が起こったのです。ひょっとしたらということを今でも思ってい
ます。これは地震学者に言っても誰も信じません。しかしここ何年かを見ていますと、
2000年から富士山周辺で異常が起こっています。2000年三宅島大噴火。200
4年浅間山で中規模の噴火。その前に雲仙普賢岳の大噴火がありました。江戸時代では
宝永年間に東南海地震、富士山大噴火、浅間山大噴火(これは大飢饉でした)、そして
雲仙普賢岳。これを地図上で見ていくと、活断層や中央構造線を含めて考えていきます
と、これはずーっと連動していることだなということが分かります。こういうふうにし
て後で分かるのです。人間というのは後になってとてつもないことがあったということ
が分かる。だけど、2000年の6月から始まった浜松と掛川での顕著な異変のグラフ
(地震予知連絡会の資料)にあるように、東西方向・南北方向・上下方向共に、明らか
な異変があることがわかる。だから富士山の宝永大噴火を調べている人たちは、今相当
に警告を出しています。でも一般には警告が出されていませんね。時々週刊誌などでは
特集をしていることがあるかもしれませんが、地震をよく知っている人に私が会って話
すと、「そうだ」と言ってくれる。同じような思いで見てくれているのだろうと思う。
そういうことから考えても、今の六ヶ所村の再処理工場のことは、放射能のことも含め
て、まずいことが進んでいるなあ、何とかしなければならないなあと思っています。

 最後に1枚の写真を見ていただいて終わりにしたいと思います。これは燃料電池とい
うもので、ここに美しいもみじがありますが、これは我が家です。これは東京ガスが去
年発売したもので、私も応募して、モニターになりました。これが貯湯タンク、これが
燃料電池の本体です。貯湯タンクは大きいですね。10年で100万円のリース方式で
す。3年たつとニューモデルにただで替えてくれます。10年で100万円ということ
は、毎年10万円で、1ヶ月ではだいたい8000円くらいです。ちょっとの持ち出し
くらいですから、お風呂に入るときに、原発の電気じゃないということはすごく気持ち
がいいです。だから無精者の広瀬ではありますが、「お風呂に入りなさい」と言われる
と「はいっ!」って言って入るようになりました。ここまできているのです。予算をつ
けて、こういうのを、本当に、本気でやらなければだめですよ、その代わり。やってい
る技術者は大変で、熾烈な戦いをやっています。だけど技術的にはここまできている。
コストをどう下げるかは、マスプロダクションの量産のところで手を貸してあげなけれ
ばならないのです。国が手を貸せばどんどん加速して、今のパソコンのように安くな
る。そんなことは経済原理でよく分かっているわけですから。一番先にそれをやらなけ
ればならない。やってますか日本の国は。金を注ぎ込んでいるのは原発だけじゃないで
すか。くだらないですね。その後の30兆円〜40兆円の廃棄物のコストをどうするん
ですか。だから希望を失わないでくださいね。私には、皆さんが頼りです。それではこ
れで終わります。





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