風評被害認定委員会運営要領の問題点


(風評被害の定義)
第4条 当委員会における「風評被害」を下記のとおり定義する。
   「事実でないこと、あるいは些細なことがおおげさに取り上げられ、ある地域、
   ある業界が経済的被害を受けること。多くの場合、事故、事件等を新聞、テレビ
   などのマスコミが大きくとりあげ、それが人々のあいだで風評(うわさ、評判)
   となって発生する。」

  問題点@ : 風評被害の定義の範囲
    風評被害の定義を、当委員会が扱う風評被害(原子燃料サイクル施設立地基本
   協定に基づき、サイクル施設の保守、運営等に起因して発生した風評被害)に限
   定した方がいいのではないか。

  問題点A : 些細なことがおおげさに
    「 些細 」と「 おおげさ 」の基準が曖昧。

  問題点B : マスコミがとりあげ、それが人々のあいだで風評(うわさ、評判)
         となって発生する
    とあるが、「人々」が誰を指すのかが曖昧なので、対象となる「人々」を明確
    にすべきであるし、風評に影響されない人々は除外して考えるべきである。
    それと、風評発生の理由と経緯が抜けている。

    曖昧な点その1 「人々」とは誰か? どんな人か?
    国と事業者は、「核燃料サイクルは国民の理解を得ながら進める」としている
    が、国民の理解を得ないまま、事業者が核燃料サイクルを推進しイメ−ジを損
    なうような状況を引き起こし、それがマスコミも含む多様な経路で国民に伝わ
    り、うわさや評判を基に、国民が独自に判断した場合に発生するのではない 
    か。
    核燃料サイクルを推進する国や事業者とそれに協力する青森県の関係者は、核
    燃料サイクルをよく理解し、いかなる情報にも惑わされず冷静に対処できると
    思われるので、それらの人々のあいだで風評が発生する事は考えにくい。
    なので、ここで言う「人々」とは、それらの関係者を含む核燃料サイクルを理
    している人々以外の人々、つまり「核燃料サイクルを理解していない人々」を
    示していると考えなくてはならないし、「風評」であれば、それで構わないと
    思う。

    曖昧な点その2 なぜ風評が発生するのか? 風評の根本的な原因は何か?
    マスコミ等を通じて伝達された同じ情報であっても、核燃料サイクルを理解し
    ている人々であれば風評が発生しないのに、そうではない人々のあいだで風評
    が発生するのは、それらの情報を冷静に判断できないためであり、それは同時
    に、国や事業者が、国民の理解を得ずに核燃料サイクルを推進してきた事を意
    味する。


(認定基準)
第5条 要綱第2条第1項「サイクル施設の保守、運営等に起因して発生した農林水産
   物等の価格の低下による損失、営業上の損失その他の経済的損失であること。」
   とは、基本的には、以下を満たすものとする。
(1)原則として、風評の内容や風評発生の経緯がサイクル施設の保守、運営に起因す
   る事故、事象の発生に伴うものであること。但し、委員会が認める場合は、この
   限りではない。
(2)ほぼ同時期に一定の広がりをもって被害が発生していることなど風評による被害
   の発生について蓋然性があること。
(3)申立ての被害と風評との間に相当因果関係が認められるもの。
2 要綱第2条第2項で「その他、公平の原則を著しく害するものでないこと。」とし
 ているのは、社会通念上バランスのとれた認定であることを求めているものであり、
 生産過剰、景気の変動、社会情勢の変化による経済的損失及び特定の目的を特った団
 体等による不買運動利害関係者の結託による補償金要求等は認定の対象としない。
3 上記以外のケースについては、原子力損害の賠償に関する法律や民法等の関係法令
 との整合性に留意しながら個々に判断する。

  問題点C : 「事故、事象の発生」と「委員会が認める場合
     「サイクル施設の保守、運営等に起因して発生した農林水産物等の価格の低
    下による損失、営業上の損失その他の経済的損失であること。」よりも、「サ
    イクル施設の保守、運営に起因する事故、事象の発生や、サイクル施設からの
    放射性物質の放出・漏洩による安全性やイメ−ジの低下に伴う、農林水産物等
    の販売不振、価格の低下による損失、営業上の損失その他の経済的損失である
    こと。」の方が、現実的でわかりやすいと思う。予め具体的にしておけば、但
    書は必要なくなる。

  問題点D : 蓋然性(物ごとの実際に起こる可能性の度合)
    どのような基準によって誰が判断したものによるのかが曖昧。

  問題点E : 特定の目的を特った団体等による不買運動
     「特定の目的」と記述していながら、それがどのような目的であるのか全く
    不明である。 一般的に、特定の目的を持たない団体があるのだろうか? 特
    定の目的に賛同して集まった個人の集団が団体なのではないだろうか? 団体
    に属さない個人の場合はどうなるのだろうか?
     不買運動とは、自らは買いたくないという意思を持っていなかった人にも買
    わないように勧める事だと考える。しかし、他の人に一切関知せず、自分だけ
    が買いたくないと思い、実際に買わなかった場合はどうなるか?
     不買運動と不買・買い控えとを混同しないように、明確に区別する必要があ
    ると思う。

  問題点F : 利害関係者の結託による補償金要求等
    具体的にどのようなケ−スが考えられるのか想定してみる必要があると思う。
   仮に結託して補償金を要求したとしても、被害額よりも多く要求して儲ける事は
   無理であり、「実際の損失額」しか補償されない。むしろ、損害賠償請求し、そ
   れに応じてもらうまでに要する経費を100%回収できない可能性がある。つま
   り、逆に損をする可能性の方が高いはずである。
    つまり、「何の得にもならない事を結託してまでやる暇な人達がいるのか?」
   という事になり、風評被害認定委員会がどのようなケ−スを想定して盛り込んだ
   のか、直接聞いてみたいものである。
    気になるのは、特定の目的を特った団体等による不買運動と利害関係者の結託
   による補償金要求等は、私が代理人として申立ててから付け加えられた事であ
   る。
    無農薬米の購入を断った消費者が、そのような団体に属してして、その活動の
   一環として「不買運動」を行っていて、申立てを行った女性やその代理人の私と
   結託して補償金を要求したとでも考えたのだろうか。だとすれば、はっきり言っ
   て「考え過ぎ」であるし、もしそう考えたとすれば、「大変失礼」である。
    風評被害認定委員会が申立てを受理すれば、必要に応じ、調査委員会を置く事
   ができるので、結託の有無についても、そこで十分調査できる。


(調査委員会の構成等)
第11条 調査委員会は、調査委員をもって構成する。
2 調査委員は、認定委員会において選任する。
3 調査委員会の運営に関し必要な事項は、認定委員会会長が、別に定める。

  問題点G : 認定委員会会長
     風評被害認定委員会運営要領の改正は風評被害認定委員会が議論した上で定
    めたように、調査委員会の運営に関し必要な事項も、風評被害認定委員会が、
    別に定めればいいのではないか。 調査委員会が調査し、風評被害認定委員会
    に報告する内容が、「被害の有無の認定」及び「補償額の決定」に影響を与え
    る事を考えると、公平を期すという点からも、「会長」ではなく、「風評被害
    認定委員会」に改めた方がいいと思う。
     また、現会長は「核燃料サイクル推進」に事業者以上に意欲的な姿勢を見せ
    ている蝦名副知事であり、日本原燃株式会社とは特に利害関係を有する立場の
    人物である事からも、細心の注意を払う必要がある。


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