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平成17年12月14日
日本原燃株式会社社長
兒島 伊佐美 殿
                     再処理工場について勉強する農業者の会
                               会長  哘 清悦

契約解除に至るまでの経緯とその原因について

拝啓 時下益々ご清祥の事とお慶び申し上げます。
 10月17日付で御社に送付致しました「風評被害発生への対応依頼」の文書の件に
関しまして、こちらの要望を御理解頂くためにも、契約解除に至るまでの経緯とその原
因については、より詳しく説明する必要があるとの判断から、追加で資料を提出致しま
すので、是非ご覧下さい。ご納得下さり良き回答を頂ける事を期待致しております。 
                                     敬具

■契約解除に至るまでの経緯について 
 1.お客様との関係
   請求者本人との出会いやお客様・親族・友人らの紹介
 2.お客様との取引状況と販売量について(平成16・17年)
   ※参照:資料1 お客様との取引状況
 3.お客様との契約方法
  ・郵送した年間予約注文書に記入して頂き、FAXか郵送で返信して頂く。
  ・変更・休止・解除等の連絡が無い場合は、前年と同じ内容で自動更新とする。
  ・電話・FAX・手紙等で変更の連絡があった場合は、契約内容を変更する。
  ・年間予約注文書によって契約していないお客様については、それが無くても、都
   度の注文に応じる事ができる場合には販売する。
   ※参照:資料2 年間予約注文書等
 4.お米の発送と代金の回収方法
   宅急便で発送し、お米の代金と送料を郵便局の口座に振り込んで頂く。
 5.アンケ−トを実施しようと思った理由
    あるお客様と電話で話をしていて放射能の話題になった時、「再処理工場が稼
   動したら不安なので買えない。」と言われた。「もしそうなった場合には、その
   理由をはっきりと言ってくれますか。」と尋ねたら、「電気関係の仕事をしてい
   るので言えない」と言われた。
    その言葉を聞いて、他のお客様も同様の不安を抱いているとすれば、理由を告
   げる事無く契約解除されると、風評被害を立証する事が難しくなるので困ると思
   った。
    これまでは、栽培・販売している米の放射能汚染の心配は全くなかったので、
   アンケ−トを行った事はないが、契約解除された場合の理由を証拠として残すた
   めにも、アンケ−トが有効ではないかと思い実施した。


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 6.アンケ−トをお客様全員に行わなかった理由
    ウラン試験開始によって放射性物質が環境に放出される以上、今までのお米よ
   りも安全性が低下するのは明らかである。しかし、その事実を隠して売る事は心
   が痛むので、事実は正直に伝えなければならないと思った。
    当初は、お客様が事実をしっかり認識した上で、お客様の判断で購入継続を判
   断してくれるのを願ってアンケ−トを始めたが、回答や手紙に書かれた文章を読
   んで、再処理工場から放出される放射性物質の影響をよく理解したからというよ
   りも、今までのお付き合いや私(請求者本人)の努力を重視して、悩んだ末に購
   入継続を決めて下さっているように感じた。
    全体の販売量に対して売れ残る米の量がわずかであれば、影響は少なくて済む
   が、風評被害の申請の仕方もわからず、また、申請すればすぐに補償してもらえ
   るという見通しもない段階で、多くのお客様に断られる事になっては、無農薬米
   を栽培する計画すら立てられなくなるとの不安が高まった。
    幸い数名から断られただけで済んだので、全員にアンケ−トを実施する前に、
   風評被害の申請の仕方を覚え、損失が確実に補償される事を確かめる事と、放射
   線という専門的で難しい事については、国と事業者の責任で、国民に理解しても
   らう事をお願いする方が先決だと思った。
    国と事業者の国民への理解活動が十分に行われ、再度アンケ−トを実施した際
   に、「再処理工場から放出される放射性物質については、安全上全く問題がない
   事を知っているので、今後もこれまで通り購入します」という回答がもらえそう
   な感じがした頃に、安心を得る意味でも実施したいと考えている。
    県内のお客様に関しては、テレビや新聞、県や事業者の説明会等で、必要な情
   報を得る機会は十分あると思われるので、敢えて再処理工場でウラン試験が始ま
   る事や、微量の放射性物質が放出される事を伝える必要はないと判断した。
 7.お客様への情報提供について
    最初にアンケ−トを送付したお客様から、もっと詳しく知りたいので、資料が
   あったら送って欲しいとの意見が寄せられたので、そのお客様には1部郵送し、
   2回目にアンケ−トを送付したお客様には、同じ資料を同封して送った。 
   ※参照:資料4 お客様に郵送した資料


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■御社が風評被害の原因であると思った理由

理由1.お客様からの回答から感じられる不安
    ※参照:資料3 アンケ−トに対するお客様からの回答

   ・日本原燃からの説明書のようなものがあれば、教えていただけるとうれしいで
    す。購入者の中には、環境や安全面に詳しい方がいらっしゃって、情報を提供
    して下さるかも知れませんし、各人が判断する材料にもなると思います。
   ・消費者も工場側の説明に納得出来ない。
   ・工場側の言い分は全く信憑性が無いと思っている。過去の様々な事故を思え
    ば、例え何かあっても企業は事実を隠すでしょうから。
   ・もし可能ならば、第3者としての非営利団体に委託する等して土壌やお米が汚
    染されていない事を証明してデ−タを公表して下さると、消費者としても安心
    できると思う。万が一汚染されていた場合、工場側が何処まで保障してくれる
    のかを考えるとリスクは大きいでしょうけれど。
   ・工場側の「微量」や「ほとんど」という言葉が、「全く」では無い限り、安心
    できない。
   ・生産者の生きがいを奪ってしまいかねない工場の操業には憤りを感じる。
   ・六ヶ所村の再処理工場が稼動しないことを祈ります。
   ・私達の住むここ榛原も空港が建設中で、自然が壊されるなど、未来の発展の為
    というのにも天びんにかけられるはずもない大切なものが失われる現実です。
    近くには浜岡原発もあり、生活の便利とやはり難しい問題です。
   ・今まで通り買いたいのですが、もしも、あってはほしくない事故が起きた場
    合、状況によっては迷うかもしれません。核燃料を使う世の中にしてしまった
    のは、私たち人間ですが、なんだか、くやしくなります。
   ・17年度米は安全面から考えてやめておきます。
   ・原発の問題には大変心が痛みました。
   ・微量でも、やはり気になるのは事実です。
 
    回答からお客様の消費者心理を推察すると、事業者が国民から信頼されていな
   い事もあると思われるが、「微量であっても安心できない」というのが一番の
   原因であると感じる。


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理由2. 昨年も80%以上の県民が原子力関連施設に不安を感じているというデ−タ
    がある。全国でも、68.3%もの人が不安を感じている。一般の国民よりも
    食に安全を求める消費者が、原子力施設により不安を感じるとしても不思議で
    はない。

理由3. 平成16年の8月に、県外から訪れる観光客(県外の消費者)211名から
    のアンケ−トの結果、再処理事業で県産品のイメ−ジは悪くなると答えた人は
    84%もいた。

理由4. 「私たちの孫のことを思えば、本当は稼動してほしくないのよ。」という消
    費者の生の声。


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理由5. 昨年、美浜原発3号機の死傷事故が発生したが、放射能が外部に全く漏れる
    事が無かった事故にもかかわらず、風評被害が発生している。日常的に原子力
    の仕事に携わっている人であれば、信じ難いかも知れないが、原子力や放射線
    の知識が乏しい人、あるいは、正確な情報が伝わっていない人であれば、ごく
    普通に取る行動であると考えられる。
     特に、町企画観光課職員の「キャンセル自体よりも、今から旅行する人の選
    択肢から外されてしまうことが怖い」との発言には重い意味が込められている。
     今回、契約解除された分について御社に買取を求めましたが、実は、請求者
    のお客様や親族・友人らの勧めで、購入を検討していた新規のお客様が、御社
    の再処理工場によって心理的な影響を受け、選択肢から外した可能性もある
    が、それこそ証明する事が極めて困難な風評被害であると感じている。

理由6. 青森県が平成16年7月(ウラン試験前)に行ったアンケ−ト結果による
    と、「青森県産品を安心して食べられない」と答えた人が2.5%あった。放
    射性物質が微量であっても安心できないという消費者心理を考えると、正しい
    認識に基づく判断とは言い難いが、青森県に放射性物質の発生源である原子力
    施設がある事は、否定できない事実であり、消費者心理に全く影響を与えない
    とは言い切れない。
     仮に他の要因を考えて見るとしよう。農薬については、三村知事も「攻めの
    農業」で力説しているように、本県は冷涼な気候であるために病害虫の発生が
    少なく、全国でも農薬の使用量の少なさではトップクラスにあるので、農薬が
    原因とは考えられない。
     遺伝子組換え作物については、近年、消費者の関心が高まっているが、生産
    者ですら、本県で遺伝子組換え作物を栽培している生産者がいるという話を一
    度も聞いた事がないので、これについても原因であるとは思われない。
     このように消去法で考えていくと、原子力施設がある事によって、消費者の
    不安が高まった事以外の原因を探す事が極めて困難である。
     放射性物質を微量に放出するウラン試験が行われる5ヶ月前の時点で、2.
    5%であるので、ウラン試験開始後は、その数字が更に高くなっている可能性
    がある。
     一般の消費者よりも安全性にこだわっている消費者が、放射線に対して不安
    を抱いた際に、購入を止めるという消費行動はごく普通に理解できるものである。

理由7. 平成16年5月8日、青森市で講演した自由民主党の河野太郎議員が、会場
    からの「原子力施設周辺で収穫された野菜と原子力施設の無い地域で収穫され
    た野菜と、同じ値段で店頭に並んでいたらどちらを買いますか?」との質問に
    対して、「同じ値段という事は有り得ない。リスクが高ければ値段は下がる。
    消費者はリスクに対して値段が高いか安いかで判断する。」と答えた。
     神奈川県の消費者の代表として選ばれた河野氏の、放射線のリスクが高い食
    品は、買われないし安くなるとの断言に近い発言は、非常に重く受け止めなけ
    ればならない。


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